今のEC業界のトレンドを聞かれたら即答できますか?
急成長を続けるEC業界のトレンドは日々変わるといっても過言ではありません。
うっかりしていると取り残されてしまうおそれもあります。
そこで今回はEC業界に関わるなら知っておきたいポイントと注目されるトレンドをご紹介していきます。
まずはEC化率を知っておこう
EC業界のことを知るにはEC化率を抑えておく必要があります。
EC化率とは、実店舗やECサイトを含んだすべての商取引に占めるECサイトの割合をいいます。
BtoCのEC化率
2020年7月に経済産業省から発表された電子商取引に関する市場調査の結果では、2019年度のBtoCにおけるEC化率は6.76%でした。
前年に比べ0.54%増加しており、市場規模は19.4兆円にものぼります。
日本のEC化率は低く、右肩上がりを続けるEC業界は今後も成長が見込めます。
BtoBのEC化率
一方、BtoBのEC化率をみてみると、2019年度は31.7%と、前年に比べ1.5%の増加でした。
BtoCに比べEC化率が高いのには理由があり、企業間同士の注文や決済などの取引をデジタル変換しスムーズなやり取りを行うシステムであるEDIも含まれているためです。
BtoC、BtoBのどちらにおいても伸びしろがあり、将来性が期待できる業界です。
新型コロナウイルスの蔓延によるECサイト需要の増加が大きなポイントになったことは確実で、これを契機として今後も需要の拡大が続くでしょう。
押さえておきたい用語
次に、EC業界に関わるならばぜひ押さえておきたい用語をみていきます。
オムニチャネル
オムニチャネルとは、ECサイトと実店舗の両方の会員情報や購入履歴、ポイント情報などすべてのデータを統合する仕組みです。
これによりユーザーはECサイトと実店舗のどちらからでもスムーズに購入やポイント利用、返品交換が可能です。
企業側としては顧客満足度の向上によりリピーターの獲得や売上拡大といったメリットがあります。
ただし、実店舗を持つ企業がオムニチャネルを展開した場合、実店舗の閉店や規模縮小といったことが起こり得ます。
実店舗で働くスタッフのモチベーションなのにも影響してくるので注意が必要です。
O2O
O2Oとはオンラインtoオフライン(オフラインtoオンライン)を略した言葉で、実店舗の集客を目的に、Webクーポンなどを配信することをいいます。
ユーザーはスマートフォンでWebクーポンなどを入手し、実店舗で提示することで割引やサービスが受けられます。
O2Oを行うにはポイント情報の統合を行う必要がありますが、オムニチャネルのような長期的な施策ではなく、効果は短期的かつ限定的です。
越境EC
越境ECとは、国内のユーザーだけでなく、海外のユーザーもターゲットにしたECのことです。
2020年は新型コロナウイルスの蔓延により海外渡航が制限されました。
中国人観光客をはじめとした海外旅行者の購入意欲に頼っていた分野では大きなダメージとなりましたが、EC業界ではこの越境ECに注目が集まるきっかけともなりました。
日本の製品は海外でも人気が高く、越境ECへの取り組みは売上アップが期待できます。
ただし、大きな市場と目される中国は、Google検索ができないなどの諸事情により自社ECサイトの立ち上げが困難です。
また、中国ではネットショッピングの際、検索エンジンを利用するという習慣がなく、モール検索が一般的です。
そのため、中国に向けて越境ECに取り組むなら大きなシェアを誇る「天猫(T-mall)」や「京東(ジンドン)」といったモールに出店するのが確実でしょう。
売上ランキングから見るEC業界のトレンド
EC業界のトレンドを把握するには売上ランキングをチェックするのが効果的です。
ランキング上位を占めるECサイトにはトレンドが大きく反映されており、分析や目標設定を定めやすいです。
2019年度のEC売上高ランキングでの上位5社は以下の通りです。
- Amazonジャパン(総合)
- ヨドバシカメラ(家電)
- ZOZO(衣料品)
- ビックカメラ(家電)
- ユニクロ(衣料品)
この順位で注目すべきは2位のヨドバシカメラでしょう。
ヨドバシカメラは実店舗とECサイトを統合するオムニチャネルに成功したことで躍進しました。
4位につけたビックカメラとともに家電量販店ですが、メーカーや型番で検索が可能で、どこで購入しても同じ品質が保証されている家電製品はEC業界で力を発揮しやすい分野といえます。
3位に入ったZOZOはECサイトの運営に力を入れていることで有名な企業です。
展開するファッションコーディネートアプリ「WEAR」では、気に入ったアイテムをそのままZOZOTOWNで購入できるため人気があり、アプリのダウンロード数は1,000万を超えているといわれています。
購入までのプロセスを簡素化することでリピーターを増やしており、この順位も納得といえるでしょう。
このランキングでさらに注目したいのがオムニチャネルに力を入れながらも13位と苦戦しているイトーヨーカ堂です。
運営元のセブン&アイ・ホールディングスは総力を挙げてオムニチャネル戦略を進めていましたが、思うような結果に至っていません。
戦略の見直しと方針転換が迫られる中、同じくネットスーパーを展開するイオンとどう差別化を図るか、どのような手を打ってくるのか注目が集まっています。
ID決済がEC業界での成功を左右する
ECサイトを運営するなら押さえておきたいのがID決済です。
決済手段の充実は顧客満足度に影響する
ECサイトの決済方法といえばコンビニ決済や代引き、クレジットカード決済などが一般的ですが、実は、ECサイトにおける顧客満足度のポイントの一つに決済手段の充実があります。
気に入った商品を見つけても決済手段が限られる場合、ユーザーが別のサイトに流れてしまうおそれがあります。
一点物のハンドメイドでない限り、別のサイトに同じ商品がある可能性は高く、その際ユーザーはより自分にとって簡便に購入できるサイトを選ぶものです。
簡便さの基準をどこに置くかは人それぞれですが、「購入完了までの入力フォームが少なくて済む」「すでに決済事項の入力が済んでいるサイトを優先する」といった基準を持つ人は多いでしょう。
ID決済は手間も不安も省いてくれる
ECサイトでクレジットカード決済を行う場合、心配になるのがセキュリティ面です。
大手モールではない、小規模なECサイトではカード番号の入力が必要なクレジットカード決済は不安に感じることもあるでしょう。
そんな時に便利なのが「Amazon Pay」や「楽天ペイ」といったID決済です。
ID決済はIDとパスワード入力だけで決済が可能なので手間もなく、安心して利用できます。
決済手段が乏しいと機会損失になるおそれも
初めて利用するECサイトで個人情報の登録をしなければならないのは仕方があないものの、情報量が少なく済むのであればそれに越したことはありません。
EC業界でID決済が普及したのにはそういったユーザー心理が影響しているとも考えられます。
ユーザーが希望する決済手段がないだけでせっかくの売上のチャンスを逃してしまうのはもったいないです。
ニーズの高い決済手段については導入を検討してみるべきでしょう。
まとめ
今回はEC業界のトレンドについてご紹介してきました。
成長を続けるEC業界にはさまざまな分野から参入が相次いでいます。
そのため、これまでとは違った競争が生まれるなど、競争の激化が予測されますが、EC業界の拡大や成長にはいい材料となるでしょう。
しかし、移り変わりが激しく、トレンドが変化しやすいのも事実です。
どんなものがトレンドとなるのか、日ごろからアンテナを張り巡らせておくことがEC業界を生き抜くポイントになるでしょう。
コラム筆者
ECコンサルタント・アドバイザー
安田昌夫
- 東京都出身1984生まれ
- ECサイト運営歴10年で広告費をかけずに45万PVを達成
- 適切な集客・広告運用のサポート・無駄な広告費をカットするためのアドバイスを得意とする
- 月商1200万円突破