生活様式が変わったことでこれまでとは違った分野からも出店が相次ぐEC市場ですが、一時的なものなのか、流れに乗っていいものなのか判断がつかないという人もいるでしょう。
そこで今回はEC業界の現状や将来性、出店するならぜひ押さえておきたいポイントなどをご紹介しましょう。
今後EC市場規模は大きくなる?
1990年代に誕生したECは、インターネットの普及が進むにつれ急成長を遂げてきました。
2000年代に入り、大小にかかわらず多くの企業がEC市場に参入し、以降はスマートフォンの普及によりEC市場はますます賑わいを見せています。
しかし、この成長は今後も続くのでしょうか?
緩やかながらも成長が続いている
2020年7月に経済産業省が発表した2019年度の電子商取引に関する市場調査の結果によると、BtoCのEC市場規模は前年に比べ8%近く増加していることがわかりました。
BtoCとは法人と個人間での取引を指しており、市場は物販・サービス・デジタルの3分野に分かれています。
EC化率についてはいずれの分野でも前年比増の結果が出ており、前年の2018年度調査から引き続き増加していることから、EC市場規模は大きくなっていると判断していいでしょう。
競争が激化する?
EC業界2020年の大きなトピックといえば新型コロナウイルスの感染拡大です。
外出自粛や店舗休業などにより日本経済は大きな打撃を受け、経済活動の場がEC市場に移行します。
これまでECとは距離を置いてきた飲食や教育といった分野でもEC化を進めたのです。
「ステイホーム」を推奨する新しい生活様式では家で過ごす時間を快適にするため、日用品やインテリア、趣味や習い事といった幅広いジャンルでEC需要が伸びました。
しかしこれによってEC市場での競争は激化します。
新たに参入する企業は市場に食い込むため、価格競争を仕掛けます。
知名度のない自社サイトの立ち上げではなく、すでに地位を確立している大手プラットフォームに乗り入れる企業も多く、今後も競争は続くでしょう。
EC市場のトレンドは?
これからEC市場に出店を考えている場合、押さえておかなくてはならないのがトレンドです。
激化する競争で勝ち抜くためにはトレンドの把握は必須です。
スマートフォンとSNS
コロナ禍においてEC需要が急伸しましたが、そこで驚くべき結果も出ました。
それはECサイトを利用する人の多くがスマートフォン経由だったことです。
自宅にいるのならPCやタブレット経由での利用が増えてもよさそうなものですが、移動や立ち上げの必要がないスマートフォンはEC利用時のデバイスとして定着したようです。
また、検索ツールとしてSNSの利用も普及しました。
リアルな口コミからECサイトまで訪れることのできるSNSは、活用次第で売上増加が見込めます。
決済の簡素化
スマートフォンがEC利用時のデバイスとして定着したことによりECサイト側に求められることは、アプリ対応などのスマートフォン向けサイトの利便性向上です。
スマートフォンからECサイトへ訪れた際、画面が見づらい、操作がしにくいといったちょっとした不満は利用者の流出につながりやすく、また、決済手段も大きく影響を与えます。
政府の大がかりな後押しもあってキャッシュレス化が進んでいましたが、コロナ禍によってID決済が一気に浸透しました。
クレジットカード決済と違い、IDとパスワード入力のみで決済が完了するという手軽さはECサイト利用を促進させてくれます。
越境ECの拡大
日本国内だけでなく海外の利用者もターゲットにした越境ECは、今後EC市場に出店をするならば見据えておきたい存在です。
コロナ禍での渡航制限により、海外からの旅行客に頼っていた分野では大きな影響を受けてしまいました。
しかし、日本製品の需要が減ったわけではありません。
越境ECによって、海外から人気の高い日本の製品を提供できれば大きな販路を手に入れられます。
ECサイト運営に求められるスキルとは?
堅調な成長を続けるEC市場ですが、実は慢性的な人手不足に陥っています。
EC市場の成長に人材の育成が追い付いていないのです。
ECショップの運営スキルやマーケティングスキルといったものを身に付けられれば、ECサイト運営を軌道に乗せることができるでしょう。
具体的にどのようなスキルが求められるのかみていきます。
ECサイトを構築できるエンジニア
自社サイトを立ち上げるにしても、大手プラットフォームに乗り入れるにしてもエンジニアの存在は欠かせません。
サイトに訪れる利用者の解析や、アクセスが集中してもしっかり制御できる技量が求められます。
ECマーケティングを理解し、活かせるスキル
ショップ運営では不特定多数に向けるよりも年齢層や性別など、ターゲットを絞ることが成功につながりやすいです。
自社商品やサービスがどういった利用者層に好まれているのか、ターゲットにすべき層を的確に分析し、効果的なアピールを行う必要があります。
こういったECマーケティングを理解し、集客につなげられるスキルが求められます。
確実なバックエンド業務をこなせるスキル
バックエンド業務とは、ショップから受けた注文の処理から商品在庫の管理、出荷作業や問い合わせ対応などの裏方作業です。
ショップ立ち上げから間もないうちは注文数も多くないため、バックエンド作業も少ないですが、ショップの規模が大きくなるにつれ負担が増します。
利用者にしてみればバックエンド作業は「できて当たり前」と捉えられやすく、ミスはショップの信用問題や評判に直結するため、確実にこなせるスキルが求められます。
ECサイト運営の将来性は?
EC市場に出店を考える際にもっとも気になるのが業界の将来性でしょう。
先細りが見えている業界に打って出るにはリスクが高すぎます。
EC市場は緩やかながらも拡大を続けており、そういった点では将来性が高い業界といえます。
特に期待できるポイントをみていきましょう。
SNS利用の拡大
スマートフォンの普及とともに拡大しているのがSNS経由でのECサイト利用です。
FacebookやTwitter、InstagramなどSNSは種類が多く、集客ツールとして優秀です。
SNSと聞くと若年層が利用するイメージを持つかもしれませんが、幅広い世代で利用されており、ターゲットの絞り込みがしやすいといったメリットがあります。
SNSの効果的な活用が売り上げアップにつながることは間違いないでしょう。
越境ECの増加
日本だけでなく世界の経済にも大きな打撃を与えた新型コロナウイルスですが、EC業界には追い風となった側面もあります。
その一端が越境ECの増加です。
世界的に商品購入方法の一つとしてECサイトの利用が定着しつつあるため、今後も越境ECは拡大の可能性が高いです。
それには決済機能の充実や多言語への対応などの課題もあり、しっかりとした準備が必要ですが、越境ECを見据えた運営ができるかどうかは大きなポイントになるでしょう。
CV率の向上がカギとなる
ショップを訪れた利用者が実際に購入に至る割合をコンバージョン(CV)率といいます。
ショップへのアクセス数がそのまま売り上げにつながるわけではなく、早々に離脱してしまう利用者も少なくありません。
ECショップの多くがこのCV率を上げることに苦戦しています。
サイトの見やすさや商品の探しやすさといった観点はもちろん、入力フォームの煩雑さなども離脱の原因となります。
CV率の向上にはこれらを利用者目線でチェックしていくことも大切です。
まとめ
今回はEC市場への出店を検討している人に向けて、EC業界の現状や将来性、押さえておくべきポイントなどをご紹介しました。
今後も成長が期待できるEC業界は魅力的な市場です。
しっかりと準備をして挑んでください。
コラム筆者
ECコンサルタント・アドバイザー
安田昌夫
- 東京都出身1984生まれ
- ECサイト運営歴10年で広告費をかけずに45万PVを達成
- 適切な集客・広告運用のサポート・無駄な広告費をカットするためのアドバイスを得意とする
- 月商1200万円突破