コラム

【安田昌夫解説】中国はなぜEC先進国になれたのか?

ECサイトやネット通販で人気の企業といえばAmazonジャパンや楽天を思い浮かべる人も多いでしょう。

実際に日本国内でトップの楽天は3兆円以上の売上を誇ります。

世界に目を向けてみると、EC業界最大手のAmazonは25兆円とその規模の大きさがわかります。

しかし、そのAmazonに次いで売上を上げているのが中国のアリババであることはご存じでしょうか?

売上高は5兆円以上と、日本のトップ売上を誇る楽天を大きく引き離しています。

実は、中国は年間売上160兆円を誇るEC先進国なのです。

今回は中国のEC事情についてご紹介しましょう。

 

中国はEC先進国

世界のEC市場は現在進行形で拡大を続けています。

中でも中国市場は企業が個人にモノを売る「BtoC」EC市場において、世界の55%以上のシェアを誇るEC先進国です。

国として豊かになった中国では国民が海外旅行先で“爆買い”を行うなど、中国人の購買力は世界各国に大きな影響を与えてきましたが、それは中国国内における消費も例外ではありませんでした。

特に、インターネットで気軽にショッピングができるECサイトは急成長を遂げています。

冒頭でもご紹介した通り、中国のEC企業といえばアリババが運営する「タオバオ」や京東商城の「ジンドン」などの大手企業が中国国内のシェアを独占している状態でしたが、現在では様々なビジネスモデルを展開する多くの企業が参入し、市場競争が活発化しています。

中国でなぜこれほどまでにECが普及したのかというと、近年の急速な経済成長とインターネットやスマートホンの普及が同時期に起きたためと考えられています。

モバイル決済などのキャッシュレス化も手伝い、瞬く間にネットショッピングが日常的なものとなったのです。

 

中国のECは日本のECとどう違う?

日本でも普及しているECサイトですが、中国では人気商品の傾向が少し違うようです。

中国のECサイトで売上の上位を占めているのが日本メーカーの商品です。

紙おむつや洗顔料、スキンケア用品などの日用品から電気シェーバーや美顔器、イヤホンなどの生活家電などが人気があります。

他にも、ユニクロなどの衣料品も人気があり、セールを開催すれば即完売になるほどだそうです。

これまでは観光などで日本を訪れ、直接購入していたものをECサイトにて購入してると考えると、こういった日本メーカーの日用品が売れる傾向も納得できるでしょう。

 

ライブコマースが急成長

ECとライブ配信を融合させたのが「ライブコマース」です。

人気のタレントやインフルエンサーなどがライブ配信を行い、視聴者が質問コメントを送るなどリアルタイムにやり取りをしながら商品を購入できる新しい領域です。

これまでのようにメーカーが一方的に商品をアピールするのではなく、配信者と視聴者がコミュニケーションを取りながら商品を知ることができる“ライブ感”が人気のカギとなっています。

中国では早くからライブコマースが広がりを見せていましたが、2020年の新型コロナウイルス拡大により爆発的に需要が伸びました。

休業せざるを得ない店の商品を店主が撮影しながらライブコマースで販売するなど、これまでECサイトと縁のなかった店がライブコマースを活用し始めます。

これに対し、場を提供するプラットフォーム側も登録手続きの簡素化や登録料の無料化などの支援を行ったことから一気に認知度が上がり、ライブコマースは単なる買い物手段だけでなく、情報や娯楽のツールとして成功したのです。

 

中国人の買い物傾向とは?

中国のECサイトでは日本メーカーの商品が人気ですが、“とにかく安いものを大量に買いたい”といった需要ももちろんあります。

あるECサイトではトイレットペーパーなどの日用品や主食である米などは驚くべき低価格で提供されており、国内どこへでも送料無料で届けられます。

中国では人口の多くが都市部ではなく地方の小さな町や村に点在しており、その数は10億人以上ともいわれています。

そういった人たちをターゲットにしたサイトでは少しでも安いものを大量に購入できる商品の方が人気があるのです。

どういった層をターゲットにするかによってサイトの取扱商品やサービスなども工夫されています。

また、大手サイトの「ジンドン」では無人店舗のスーパーマーケットを展開しています。

店舗には食料品や日用品が並び、すべてに無線タグが取り付けられています。

無人店舗なのでレジは存在せず、利用者が入店した際に個人認証を受け、買い物を終え退店する際に会計が済むというシステムです。

実店舗でないと不安が残るといった利用者からの声に応えたものですが、実店舗とはいえ、システム自体はネットショッピングと変わりません。

これまで培った経験やノウハウを応用した店舗づくりといえるでしょう。

要望があったからといって従来型の実店舗を展開するのではなく、新しい方向へ持っていくところに中国らしさがうかがえます。

 

中国の物流事情とは?

日本ではネットショッピングを利用する際、ほとんどのサイトで配達希望日時の指定ができます。

しかし、中国国内のECサイトにはそのようなサービスは提供されていません。

そもそも、中国の物流では荷物の破損や水濡れなど日常的ですし、荷物の紛失といったことも珍しくありません。

そのため、運送途中で商品が破損や紛失した場合は店舗がすぐに交換品を手配してくれるのが一般的です。

しかも、交換品の返品は必要ないことが多く、破損や紛失によるトラブルは少ないようです。

 

「独身の日」は世界のECサイトが恩恵を受ける?

中国EC企業の最大手であるアリババが始めたのが「独身の日(光棍節、シングルデー)セール」です。

これはシングルを表す数字の1が4つ並ぶ11月11日にちなんだもので、これまでは11日のみの開催でしたが、2020年は11月1~11日まで開催されました。

そのため、最終取引額は前年の2倍近くとなる7兆円超と過去最高を更新しています。

「独身の日」は参加する各社が大幅な値引き販売を行うイベントですが、取引額の高騰にはこれまで参加を見合わせてきたカルティエやプラダなど、高級ブランドの売上が大きく貢献しているようです。

毎年取引額を更新し、中国版ブラックフライデーとして定着してきたことが「独身の日」への参加によりブランドイメージが傷つくのではないかとの懸念を払しょくしたことに加え、欧州では多くの都市でロックダウンがあり、例年より商品の売れ残りが多かったことも高級ブランドの参加数が増えたことの要因と考えられます。

新型コロナウイルスの感染拡大により世界経済は大打撃を受けました。

それは中国も同様でしたが、他国との違いは立ち直りが早かった点です。

これまで「独身の日」を様子見していた世界的ブランドたちがこぞって初参加し、在庫を売りさばきました。

アリババの発表によれば2020年の「独身の日」セールによる荷物の配送件数は22億件に達したとのことで、勢いは年々増しています。
期間中、特に話題を集めたのがライブコマースによる商品販売です。

人気の高いインフルエンサーはもちろん、HUAWEIやHAIER、エスティローダーやランコムといった企業はライブストリーミングによって大きく売上を伸ばしています。

カルティエのライブストリーミングショーには80万人近い視聴者が訪れ、約30億円のネックレスが紹介されるなど、「独身の日」でもライブコマースは売上アップに貢献していました。

 

まとめ

今回は中国にEC事情についてご紹介しました。

日本ではあまりなじみのない企業も多い中国EC市場ですが、中国は世界でもトップクラスの売上を誇るEC先進国です。

ライブコマースなどの新たな領域にも積極的に挑戦し、その市場規模は日々拡大し続けており、世界の企業から注目を集めています。

 

安田昌夫

  • 東京都出身1984生まれ
  • ECサイト運営歴10年で広告費をかけずに45万PVを達成
  • 適切な集客・広告運用のサポート・無駄な広告費をカットするためのアドバイスを得意とする
  • 月商1200万円突破

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